20120721_1541
8/8

8平成24年(2012年) 7月21日No.1541vol.2住みつづけたいまちとしま 豊島区制施行80周年孫の拓哉さん年は、豊島区が誕生して80周年を迎えます。本シリーズでは、区に長くお住まいの多世代家族の方からお話をうかがい、まちやご家族の歴史をお伝えしていきます。 第2回目は、江戸六地蔵で知られる真性寺からほど近い巣鴨のまちで、息子夫婦、孫と3代で暮らす、江戸べっ甲職人、宮本正義さんを訪ねました。今家族の歴史は伝統の技とともに祖父と孫で作る江戸べっ甲細工 家と隣合う工房に、材料を削るヤスリや糸鋸のリズミカルな音だけが響いています。明治時代から続く「宮本工業」を営み、豊島区伝統工芸保存会会員でもある宮本正義さんは88歳。めがねフレームを得意としており、現在の天皇陛下が皇太子の時代に献上したこともあるほど、その技術力は高く評価されています。 べっ甲とは、ウミガメの一種であるタイマイの甲羅のこと。13枚から成る「肚」と25枚の「爪」に型を打ち、柄を合わせ、小刀や木賊と呼ばれる道具で巧みに加工します。接着剤を使わず、水と熱したこての加減で甲羅どうしを張り合わせることにより、深く艶やかな色の製品ができあがっていくのです。 正義さんと作業台をはさんで向かい合い、寡黙に作業を続けるのは、孫の拓哉さん。三代目としてこの道に入って8年目です。「この仕事がやりたかったんです。小さい時から工房で遊びながら作る様子を見てきたので、仕事はこれだと思っていましたから」と拓哉さん。「プラモデルの剣をべっ甲の切れ端で作ったりしていたよね。お弟子さんが2〜3人いましたから私が出かける時には、お守りをしてもらいながら仕事していたんですよ」と母親の祐子さんも懐かしそうです。2人の会話に耳を傾けながら穏やかに微笑む正義さんですが、こと仕事の話になると、厳しい「親方」の顔がのぞきます。「天然のものですから、模様は全部違います。型の取り方、柄の合わせ方によって、絶対に同じものはできません。仕事っていうのは直接教わるんじゃなくて、見て覚えるものです。どうすれば早くできるのか、きれいに仕上がるのか、自分で考えるしかないですよね。すべて自分の裁量です」と力をこめる正義さん。「今の若い子に見て覚えろと言うのは難しいわよ」と言う母親の心配もいざ知らず、すでに孫はおじいちゃんの背中を見てごく自然に伝統工芸の道を選び、今は弟子としてその背中を追いかけているのです。巣鴨のまちで暮らして 既にこの道では80年近くになる正義さんは、11歳で香川県の陶という小さな町から親元を離れ、学校に通いながら先代の元で修行を始めました。「独立するために、千駄木から今の場所に移ってきたのは昭和34年です。私が来た時分は、道路が舗装されていなかったので、雨が降るとびちゃびちゃとぬかるんで大変でした。その頃から高岩寺のとげぬき地蔵の縁日の日はにぎやかでしたね」と、当時を振り返ります。巣鴨は古くからお寺や神社が身近にあるまち。祭りや日々執り行なわれる行事が、住まう人に四季を知らせ、地域の結びつきを助けてきました。「おばあちゃんのお墓が真性寺さんにあるので、前を通る時は、私もおじいちゃんも一礼します。町会の催しがあれば必豊島新聞社提供 巣鴨 1951年(昭和26年)地蔵通りずお手伝いに行きますし、息子は10年以上、お神輿を担がせていただいています」と祐子さん。「子どもの頃から地域のコミュニティで育ったので、拓哉はお年寄りに優しいですね」とも言います。 そんな拓哉さんらしい目下の夢は「べっ甲で神輿を作ること」。材料となるタイマイの甲羅は希少で、養殖への挑戦が始まっているとはいえ、べっ甲をめぐる環境は決してやさしいものではありません。しかしそうした状況にあっても、この町と家族が育んだ三代目の志は、揺らぐことなく未来を見つめています。宮本正義さん▲宮本正義さんと孫の拓哉さん●中央図書館「平和について考えよう」 ■問当館☎3983-7861●駒込図書館「なぜあらそうの?~みんなで考える平和」■問当館☎3940-5751●巣鴨図書館「みんなで考える平和」 ■問当館☎3910-3608●上池袋図書館「平和について考えよう」◇8月15日㈬ 午後3時からは、映画会「字のないはがき」(18分)、「せんすい艦に恋をしたクジラの話」(15分) ■問当館☎3940-1779●池袋図書館「平和について考えよう」 ■問当館☎3985-7981●目白図書館「平和について考えよう」◇8月15日㈬ 午後3時からは、おはなし会 ■問当館☎3950-7121●千早図書館「平和について考えよう」◇8月8日㈬ 午後3時30分からは、おはなし会(ミニブックトーク・読み聞かせなど)■問当館☎3955-83617月28日㈯~8月23日㈭夏休み中に「平和」をテーマとした図書の展示や映画会、おはなし会などを行ないます。当日直接会場へ。◀(上段左から)宮本正義さん、長男の正春さん・祐子さんご夫婦 (下段)孫の有佳さん、妻の菊枝さん、孫の拓哉さん(昭和57年頃)(左から)正義さん、拓哉さん、祐子さん区立図書館 「平和について考えよう」みこしいとのこぎりか もくとくさはらすえリーズ話をうい甲をう

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る