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人は、人に支えられて生きている――。けがや病気、地震や火災などでつらい経験をした時、多くの人が普段はあまり意識しないその想いを、強く心に刻むのではないでしょうか。区内には、仕事やボランティア活動を通じて地域の安全・安心を支えている方がいます。この特集では、地域医療・地域防災の要を担う医療機関と消防団の方を訪ね、日々の取組みや現場での想いをうかがいました。おも目の前の患者さんに医療の限りを尽くす「心の医療」で、地域の「安心の要」となりたい目の前の患者さんに医療の限りを尽くす「心の医療」で、地域の「安心の要」となりたい救急医療の現場から山口 明志先生育生會山口病院名誉院長いち早い診断とチーム医療で、かけがえのない命を救う 通常、急病患者の受け入れはその地域の一次、二次救急病院(※)で対応するのが原則で、高度な処置が必要な重篤患者は救命救急センターなどの三次救急病院に搬送されます。区内には当院を含めて7つの二次救急病院があり、365日24時間対応しています。 当院では、「目の前の患者さんに医療の限りを尽くす」という思いで治療にあたっています。救急隊から一報が入るとすぐに患者さんの状態を医師を含めたスタッフが情報共有し、受け入れ体制を整えて診察。血液・レントゲン・超音波・CTなど複数の検査を数十分で行なって検査データをそろえ、直ちに処置を行ないます。この一致団結のチーム医療は中小病院だからこそ可能なことです。最近は急病患者の家族が初めから大病院を希望するケースが多く、大病院の前で救急車が何台も並んで待つ光景も珍しくありません。それが常態化すれば、一刻を争う救急救命医療は成立しません。皆さんにはぜひ、患者さんの状態に応じて段階的な対応が行なわれていることを理解していただければと思います。「弱者からVIP」まで、すべての患者さんに分け隔てなく 救急医療の現場では、大病院の医師が交代する朝と夕方の時間帯の受け入れ不能や、生活保護受給者やホームレスなどの受け入れ拒否も深刻な問題です。そんな時、救急隊は患者さんを救急車に乗せたまま受け入れ先の病院を探して奔走しています。当院は「弱者からVIPまで」を合言葉に、すべての患者さんを受け入れてきました。それが医療従事者の使命だと考えているからです。また、より良い救急医療を提供するためには、病院と救急隊の連携を強め、救急隊員も受け入れ先の病院の対応を知る必要があります。そこで、救急救命士の病院実習の受け入れにも力を入れています。 これからの医療に求められるのは、「心の医療」です。大規模病院での高度医療ではなく、現場の医療という原点に戻り、心と心を向き合わせて一人ひとりの患者さんに接して尊い命を守る時期にきていると考えています。昭和48年開院。昭和54年から二次救急指定病院となり、地域における救急医療に尽力。長年にわたり救急医療機関として都民医療の確保に貢献したとして、昨年9月、東京都と東京消防庁から感謝状が贈られました。育生會 山口病院(西巣鴨1-19-17)(※)一次・二次救急…日本の救急医療体制は、重症度に応じて救急医療機関を3段階に分けて対応しています。■一次救急…主に入院治療の必要がなく、帰宅可能な患者に対応。地域の診療所や休日・夜間応急診療所など。■二次救急…主に入院治療を必要とする重症患者に対応。近年、都心部では減少が続いているが、豊島区は7つの医療機関が受け入れている。3

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