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区長●昨年春には国際アニメーション映画祭「東京アニメアワードフェスティバル」が初めて池袋で開かれ、今春も引き続き池袋での開催が決定しました。また5月に開かれる世界最大級のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネTOKYO2018」が、丸の内周辺に加え今年から新たに池袋も会場となります。「国際アート・カルチャー都市」という将来像を明確に作り上げ懸命に取り組んできた姿勢を、いろいろな方にご理解いただき、ようやく豊島区が国際的にも活躍できる都市になってきたと、強く感じています。小林●芸術に長年携わっていますが、経済と文化は対極にあるという考え方が随分変化し、最近は経済と文化は相性が良く、この2つが一緒になることで活いき活いきとする時代になってきたと、豊島区を通じてすごく感じます。日常生活の中で質の高い芸術に触れたり、地域の文化に関わったり楽しんだり、そういう価値観が根づいてきていると感じて、私は芸術をやっている者としてありがたく思っております。またこの価値観は、どんな国の人でも共有できるものだと思うので、区長がおっしゃる国際的、世界の人々と繋つながるということに結びついてきたのだと思います。近藤●40年間の外交官生活と3年間の文化庁長官を経て、これまで私がずっと考えてきたのは、中央政府ではない地方都市が文化を活用する「地域と文化」が、これからの世界とりわけ日本を再活性化するうえで唯一と言っていいほどの答えだということ。そして、地域が文化で成功するために大事なのが、トップのリーダーシップ、住民のサポート、専門的人材、地域ならではの魅力の活用、異質なものを受け入れる寛容さ。この5つが揃そろわないとなかなかうまくいきません。世界の都市でもうまくいっている例はいくつかありますが、日本では豊島区がナンバーワンでしょうね。豊島区ほどこれを短期間で目に見える形で実現している例はほかにないと思いますので、今後私が文化について各地で説いて回る時には「豊島区を見ろ、高野区長を見ろ」と言える良いモデルケースをいただいたと思っております(笑)。区長●そんなに褒められると舞い上がってしまいますが(笑)、私もやはり、文化は賑にぎわいを作り、賑にぎわいのあるところには必ず文化があるということを信念にしております。また近藤先生がおっしゃったように、区民の参加には私も力を入れて、小林先生にも顧問を務めていただいている国際アート・カルチャー特命大使がすでに1 ,300人を超えています。そんな中、豊島区が来年2019年の「東アジア文化都市」国内候補都市に選ばれました。こんな小さな都市でも区民がこれだけ文化に対する思いが強いんだということが評価されたのだと思います。この「東アジア文化都市」という事業は、近藤先生が文化庁長官だった頃に提唱されてはじまったと伺っておりますが?近藤●モデルはヨーロッパの「欧州文化首都」で、毎年一つの都市を決めて文化行事を開催し、ほかの国がそれを応援してその都市の文化を活性化させ、それによって文化交流が進めばEU統合にも役立つだろうということではじまりました。どうしても政治や経済など機能で統合することが先行してしまうけれど、それだけではなく心が一体にならなければ統合できないんだということでこの仕組みができたのです。これをアジアでもできないかと思い、2011年日中韓の文化大臣会合が行なわれた時に提案しました。初回は2014年で、直前に尖閣諸島問題や慰安婦問題があり心配したのですが、都市間の交流は何の問題もなく続きました。都市というのは国の主権や建前から自由に行動できるし、文化というのは一番違いを超えて人々を結びつける力をもつ。それが証明されたのが「東アジア文化都市」です。小林●バレエはセリフを使わないということもあって、世界中で親しまれています。私のバレエ団ではイギリスのバレエを数多く上演していますが、そうした活動から、イギリスとの強い絆も生まれました。そんなこともあって1983年から英国王立ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスという組織の日本支部長を務めておりますが、この組織は世界84か国に広がっていて36の海外支部を置き、毎年各支部長がロンドン本部に集まり各国が持つ問題などを話し合ったりしております。もちろん韓国や中国の方も私の友人ですから、「東アジア文化都市」の事業には大変興味がありますので、私も何かお役に立てたらと思っております。区長●グローバルにご活躍されている小林先生ですが、地域に根ざした活動もされていますね。小林●現代舞踊の芙二 三枝子先生と日本舞踊の花柳千代先生が、目白に稽古場を持って熱心に活動されていて、そこに私も引き入れていただきました。「踊りはすべての人のもの」との思いから、スタジオを開放して地域の人に踊りを観ていただこうと「目白三人の会」が結成され、30年以上になります。区長●小林先生のように、私も一般の方々がもっと気軽に観られる場所をという思いで、来年秋には東京芸いよいよ「としま」が東アジアへ、世界へ躍進!近藤誠一さん×小林紀子さん×高野区長文化がまちの未来をつくる──。その信念で歩んできた豊島区は、2018年さらなる進化を目指しています。新たな年のはじまりに、国際アート・カルチャー都市懇話会会長の近藤誠一さんと、国際アート・カルチャー特命大使顧問の小林紀子さん、そして高野区長が、池袋にある国指定重要文化財「自由学園明日館」に集い、まさに豊島区の“明日”を語り合いました。舞台後のカーテンコール:小林紀子バレエ・シアター©Kenichi Tomohiro劇場の中にとどまらずまちづくりに繋つながりたい「たしなみ」を持った子どもが育つ環境作りを

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