20190911_gougai
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Profile水戸岡鋭治 みとおか えいじ人の気配を感じるデザインは感動を与えるオンリーワンのものになる JR九州の新幹線や「ななつ星in九州」など数多くの鉄道をデザインしてきた水戸岡鋭治さん。それまでの鉄道の常識を変えるような夢のあるデザインで私たちを楽しませてくれています。そんな水戸岡さんが豊島区のためにデザインしたのが、赤くてかわいい低速電気バス「IKEBUS(イケバス)」です。「乗合バスというのは乗客が想定できませんから、ナンバーワンのものではなくてオンリーワンのバスを作ろうと思いました」 オンリーワンの誰も見たことがないようなもの。それを作るには、手間ひまを惜しまないことだと水戸岡さんはいいます。「量産される車などはプレス加工で大量生産しますが、このバスは1台1台手作りです。職人さんが鉄を溶接して作っていて、椅子の張り地や寄木細工のような床の素材もオリジナルです。全部で10台ありますが、内装デザインが少しずつ違います。大手メーカーが量産する車ではできないことです。でも公共のバスだからこそ、こうした丁寧な仕事を見せる必要があると思います。乗客は自分が乗っているバスを作った人たちの手技を近くで見ることができるのです。人の心を動かすのは手間ひまをかけて作った人たちの気配が感じられるもの。本当の贅沢とはそういうことだと思います」ロンドンバスレッドのように池袋といえばイケバスの「赤」が浮かぶまちに イケバスの一番の特徴は、光沢のある真っ赤な車体。多くの色のなかからなぜ「赤」を選んだのでしょう?「赤というのは昔から祭りなどにも使われる特別感のある色で、人々に元気を与える色。高野区長から池袋のまちづくりについての熱い思いを聞いているうちに、こうした強い気持ちを形にするには赤がいいと思いました。赤といっても1000種類くらいありますから、このバスに一番ふさわしいものを選ぶために、事務所に複数の赤い板をひと月くらい置いて、昼と夜、晴れと曇など様々な条件下で比較しました。こうして作られた赤は、イケバスにしか使われていないオリジナルの色です。ロンドンに行ったことがなくても赤いバスは知っていますよね。このイケバスもそんな存在になってほしい。この『IKEBUKURORED』が池袋のシンボルになってほしいですね」 真っ赤なバスの正面はヘッドライトが目になっていて、少しおどけたようなユニークな顔になっています。子どもたちが家に帰ってすぐに絵に描きたくなるようなデザインです。「私が公共デザインをするときに考えるのは6歳以下の子どもと65歳以上の方のこと。特に子どものことを考えると、短い期間でなくもっと先のことを考えなければなりません。目先の利益や個人を主張するようなものでなく、未来を生きる子どもたちのためにあるべきなのです。そうすると環境のことも考える必要があります。このバスには冷暖房がありませんが、環境を考えて電気バスにした意味をふまえるとエアコンは必要ないのです。今のことしか考えず、個人の満足度だけを高めてものを作ろうとする時代に、この電気バスは池袋のまち全体の意識を変えるものになるのではないでしょうか」左|数多くのデザインが生み出された水戸岡さんの仕事場。右|椅子の張り地などに使われる美しいファブリックはすべて自らがデザインしたもの。1947年、岡山県生まれ。鉄道車両、船舶、建築、プロダクトデザインなど様々なジャンルのデザインを手がける。特にJR九州の車両デザインは世界的にも注目され、数多くのデザイン賞を受賞。車両だけでなく駅舎などトータルなデザインで地域活性化やまちづくりにも貢献している。水戸岡鋭治さんスペシャルインタビュー11月、池袋の主要スポットをめぐる電気バス「IKEBUS」の運行がスタートします!真っ赤な車体のバスをはじめユニフォームやバス停などをトータルデザインした水戸岡さんに、イケバスのデザインに込めた想いや池袋のまちづくりについて語っていただきました。イケバスは誰もが参加できる小さな舞台。池袋の新しい物語をつくるのは乗客のみなさんですIKEBUS Story2

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