20190911_gougai
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池袋で新しい物語を紡ぐ旬の人たち池袋の過去・現在・未来をつなぐ 植田志保さんTour of WE ROAD- ウイロード再生物語 -  池袋の東西を結ぶウイロードは、正式名称を「雑司が谷すいどう隧道」といい、開通は1925年に遡る。東西通行の要所でありながら、戦後の一時期、悪臭漂う「ションベン横丁」と呼ばれていた。1985年に改修工事が行われ「ウイロード」の愛称が付けられたが、年月とともに壁はひび割れ、天井から漏水が滴り、ウイロードは再び無残な姿を晒していた。2017年、改修事業スタート。区は当初、ウイロードの壁面をパネルで覆い、アート空間として意匠を施す計画でいた。そこで、色による空間演出を手掛けていた植田志保さんに、壁面を飾る作品の提供を依頼したのである。 2017年12月25日、彼女は池袋にやってきた。そして初めてウイロードと対面する。これぞ運命の出会い。ウイロードに足を踏み入れた瞬間、何かに駆り立てられる強いエネルギーを感じた彼女は、ウイロードの壁に直接描きたいと、決然と区に申し出た。想定外の提案にとまどいつつも、区も自分たちの間違いに気づかされる。良いことも悪いことも含め、人々の日々の営みの中からその土地独自の文化が育まれていく。その歴史に蓋をして、ただきれいなだけの空間に変えてしまうことは、自分たちのまちの歴史を否定すること。池袋だからこその、ウイロードだからこその改修の道を探らなければならない……。 もしかしたら、クリスマスの贈り物として、天が彼女をウイロードのもとに遣わしてくれたのかもしれない。ウイロードも彼女を待っていたにちがいない、きっとずっと長い間。あの時、ウイロードは彼女にどのような「声」を発したのだろう……。確かなことは、ウイロードが発した「たましいの声」を彼女がしっかりと受け止めたということ。 こうしてウイロードの「改修」改め「再生」プロジェクトは始まった。 “1000万のたましいを呼び覚ます 「色のすること」~Tour of WE ROAD ~”。プロジェクトの名称が決まり最初に行ったことは、ウイロードに宿る「たましいの声」に耳を澄ますこと。地元の人々から話を聞き、ウイロードにまつわる思い出も募集した。物乞いをしていたしょうい傷痍軍人の話から青春時代の淡い恋のエピソードまで。様々な思い出に耳を傾け、それぞれの物語から「たましいの声」をすく掬い取り、色に変えていく。それこそがウイロードの「再生」につながる道と信じて。 2019年3月8日、池袋駅前公園仮設アトリエで天井パネル描画制作開始。5月31日、45枚の天井パネル画完成。そして7月からは壁への直接描画が始まっている。まだ肌寒い春のはじめから、季節は夏へと移り、百年に及ぶ歴史の巡りから再生への物語を紡いでいくため、今日も彼女はウイロードの壁に向き合っている。公開制作は11月まで続く。 プロジェクトが完了しても、ウイロード物語は終わらない。物語は続いていく。11月になったら、ウイロードに行ってみよう。ずっと静かに、ただそこに在ることに耐えてきたウイロードが、楽し気に語りかけてくれるかもしれない。はじまりはね、こんなふうだったんだよ…それからね、また、はじまりのはじまりなんだよ……と。ウイロード壁面描画の公開制作実施中!場所:ウイロード地下通路内制作期間:2019年11月中旬頃まで制作時間:9:00~17:00頃制作日:月曜日~土曜日(制作の進捗により作業を中止する場合があります)11月1日、Hareza池袋がプレオープン!IKEBUKURO REDな場所Photo Ⓒ KEISUKE SUZUKI1000万のきらめく物語が生まれるまち-Hareza池袋のエリアロゴの横一直線のラインは「舞台」を、奥に続くグラデーションは「光」をイメージしており、すべての人にスポットライトがあたり、感動や夢、希望に満ちた物語が次々と生まれる「光あふれる舞台」を表現しています。 豊島区がめざす国際アート・カルチャー都市のコンセプト「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」のシンボルとなる「Hareza池袋」。来年7月のグランドオープンに先立ち、11月1日、中央のホール棟と新区民センターがオープンします。 ホール棟の真っ赤な大理石の階段をのぼると、様々な色が美しいハーモニーを奏でるアーバンスクリーンが目の前に!Hareza池袋の3棟をつなぐこのスクリーンは、晴れ舞台を飾る屏風をイメージしたもの。光を浴びて、様々な表情を映し出します。劇場都市池袋の中心で、あなたも主役の気分を味わってみませんか?植田 志保美術作家Profile1985年兵庫県生まれ。色に立脚した表現活動を軸に「色」の有機的な働きを捉えた作品群『色のすること』や、対話を通し個人の記憶や意識に潜む「色」を顕在化させる対話描画"In a Flowerscape"をライフワークとして行うなど、多岐にわたる。IKEBUKURO REDな人4

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