20210101_1908
2/4

広報としま特集版 令和3年(2021年) 1月号 No.1908豊島区役所 〒171-8422 豊島区南池袋2-45-1  ホームページ http://www.city.toshima.lg.jp/2人々の思いを感じ続けた制作期間高野●ウイロードが生まれ変わってから1年が経ちました。植田さんには77mに及ぶ通路の壁と天井に絵を描くという偉業を成し遂げていただき感謝しています。池袋の第一印象はいかがでしたか?植田●エネルギーのあるまちだと思いました。むき出しで生々しくて、すごく本音を出していて、正直なまちだと体感しました。高野●アーティストらしい素晴らしい表現ですね。池袋はずっと「怖い、暗い、汚い」という昔の印象を引きずっていました。さらに2014年に豊島区は消滅可能性都市だと指摘されました。「若い人にも人気があるのに、なぜ?」と、 私だけでなく、多くの区民がそう思ったでしょう。でも、私はそのピンチをチャンスに変えようと決意したのです。植田●ウイロードのプロジェクトが始まる前に豊島区のまちづくりを勉強しましたが、本当に数多くの取組みをされてきましたね。高野●消滅させないためには、子育てしやすいまち、女性に優しいまちを作らなきゃいけない。その大きなポイントがウイロードだったのです。池袋駅の北側には東口と西口を結ぶ通路が駅構内以外ではウイロードしかありません。天井が低い通路を平日で3万人、週末になると5万人ほどの人々が通ります。歩行者だけでなく、自転車も、ベビーカーも利用する。でも調べてみると通行者のうち女性は3割しかいなかったんです。植田●それでプロジェクトが始まるのですね。高野●国際アート・カルチャー都市にふさわしいシンボルにしたい。そう思って適任者を探しているときに植田さんに出会えたわけです。ウイロードを最初に見たとき、何を感じましたか?植田●2017年12月、クリスマスの日に区の職員の方とウイロードで待ち合わせをしました。通路の中に入ると、なぜか心が震えました。いろんな命がここにあった。そのエネルギーの強さに引きつけられ、泣きそうな気持ちになりました。そこにある魂のようなものを一つひとつ撫でるように壁を手で触っていく。すると、ありのままでいい、この場所のすべてを肯定しながら、感じたことを表現すれば美しくなり、そのエネルギーは駅の東西をめぐり、循環する。そう強く思えました。高野●植田さんが壁に手をあて、瞑めい想そうにふけっている姿を見たことがあります。あぁ、この方は我々には分からない場のエネルギーを感じて、絵を描いてくれるのだと。それは驚きであり、この方にお願いして本当によかったと思った瞬間でした。8か月に及ぶ長期間の制作。それも公開制作です。いろいろな交流がありましたか?植田●たくさんありました。陰陽混合、喜き怒ど哀あい楽らくというふうに、まるで人生の縮図のような日々でした。心の襞ひだをたくさん見ました。区長さんをはじめ、職員の方々、まちの人々が本当に興味を持ってくれました。「何ができるんだろう、楽しみだね」と声をかけてくれる人も多くて。みなさん、ウイロードの話をするとき、「昔は汚かったんだよ」と言うのですが、その口調がまるで自分の子どもの話をするように優しい。みなさんにとって、本当に思い入れのある場所だと感じることができました。高野●植田さんとまちの人々との共同制作ですね。植田●本当にそうです。高野●きっとまちの人たちも植田さんの意気込みを感じて、制作を応援したいと思ったのでしょう。ウイロードでの挑戦は「豊島区は本当にまちを変える」という実感として区民に広がっていきました。植田ファンもたくさんできましたね(笑)。文化は日々の心の動きの積み重ね高野●豊島区では消滅可能性都市を機に大きな政策転換をして、子育てしやすい、女性に優しいまちにする取組みを進めてきました。しかし、現実への対応だけでなく、未来へのビジョンが必要です。それが「国際アート・カルチャー都市構想」です。その理念は、まさにSDGsが提唱する誰ひとりとして取り残さない社会であり、日常に潤いがある人間らしい暮らしのあるまちづくりです。国際アート・カルチャー都市への取組みが評価され、豊島区はSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業に選ばれました。ウイロードの挑戦は、まさに取組みのシンボルです。植田●文化というのは日々の心の動きの積み重ねです。豊島区には思いやりがあり、うれしい感じがまちにあります。特別なことでなく、日常のまちの2019年11月、池袋駅の東側と西側を結ぶ通路「ウイロード」が明るく美しい空間に生まれ変わりました。鮮やかな絵画を通路全体に描いたのは美術作家の植田志保さん。制作にかけた思い、まちの人々から得た力、そしてSDGs未来都市に欠かせないまちの潤いを文化によって育む大切さについて高野之夫区長と語り合いました。アートでまちづくりに挑戦[シリーズ対談] SDGs未来都市の風景を描く vol.02高野之夫豊島区長植田志保美術作家1925年に開通した「雑司が谷隧道」が1986年に改修されウイロード(WE ROAD)に。2019年、老朽化した通路を明るく、きれいに女性も安心して通行できるよう植田さんの協力を得て、アートを感じる空間に生まれ変わった。新春新春対談対談

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る